写真左から
来馬輝順先生(一級建築士事務所 建築工房匠屋 主宰)/杉浦充先生(充総合計画一級建築士事務所 主宰)
倉島和弥先生 (RABBITSON一級建築士事務所 主宰)/古川泰司先生 (アトリエフルカワ一級建築士事務所 主宰)
新しき挑戦。
次世代を担う建築クリエイターの育成。
ARCHITECTURE CREATOR
古川
ファッション、アートの分野で幅広く活躍できるクリエイティブな人材を育成してきた「渋谷ファッション&アート専門学校」が、新たにチャレンジする領域が「建築」です。建築の楽しさややりがいを体感しながら、クリエイターとしての感性と幅広い才能を育んでほしい――。他校にはない斬新なカリキュラムとクリエイティブな視点で、時代と社会が求める建築クリエイターを育成するのが、「建築クリエイター科」の狙いです。
杉浦
建築における実務経験があり、なおかつその体験を伝えられる人が、「建築クリエイター科」の講師に名を連ねています。アカデミックよりも実務に重きを置いて取り組んできた経験豊富なベテランばかりです。建築の舞台はあくまでも「現場」。現場を熟知する者が講師となり、リアルな建築を教えることに意味があると考えています。
古川
建築の世界では、我々の世代が次の若い人たちに自分たちの持つスキルを伝え、後継を育成していくことが重要です。その責任を認識しながら、それぞれのフィールドで取り組んできた講師たちに集まってもらいました。
倉島
そして、「建築クリエイター科」のカリキュラムはとにかく斬新です。学生だけの力で原寸の小屋を作るといった、実践的な取り組みも計画しています。
来馬
倉島先生から「原寸」という言葉が出ましたが、建築においては頭の中の想像や計算、図面からではなく、現場から感じ取る「スケール感」が非常に重要です。そんな「スケール感」を体験できるような実践的なカリキュラムも準備しています。
杉浦
座学だけだと頭に入らないという学生が多いんですよね。座学を踏まえて実践を挑むより、現場で実践してから座学で学ぶほうが効果的な場合もありますから、何も知識のない状態の学生を現場に送り込み、教室に戻ってきてから座学で振り返るといったカリキュラムの組み立ても考えています。
来馬
“手触り”を大事にしながら、リアルな建築の面白さを体感してもらえる学校にしていきたいですね。
WOODEN ARCHITECTURE
古川
「建築クリエイター科」設立の背景には、建築士の資格保有者が足りなくなるという社会情勢があります。同時に、2025年の建築基準法改正の問題もあります。現在は木造住宅等の小規模建築物は、特定の条件下で建築確認の審査を一部省略する、いわゆる四号特例の対象となっていましたが、改正法ではそれが廃止されます。構造審査に対応するきちんとした仕様書や図面を作成できる、高いスキルを持った技術者がますます求められるようになるのです。
倉島
環境問題への対応や、リノベーションの需要急増など、社会のニーズの高まりも忘れてはなりませんよね。たとえば、昨今、循環型資源である木材を使用した木造建築の良さがあらためて見直されています。木材は、「植える→育てる→伐採する」を繰り返すことで半永久的に再生産できる、地球にやさしい優れた資材だからです。法律も木材利用促進を後押ししていますし、世界的に見ても木造建築へのシフトが進んでいます。
来馬
それなのに、木造建築に真摯に取り組んでいる設計事務所や工務店はまだまだ少ないですよね。大学を卒業し実務を経て一級建築士の試験に合格できるレベルでも、二級建築士の試験に落ちてしまう人もいます。二級建築士で必要とされる木造建築の図面が描けないからです。
倉島
模型を作る程度では、木造建築の仕組みや設計図を理解できませんからね。木造建築コースを設けている専門学校もありますが、ふたを開けてみるとCAD実習がメインだったなんてことも。木造建築を深掘りして教えている教育機関はほぼないと言っても過言ではありません。
古川
だからこそ、木造建築の構造に造詣の深い講師を何人も集めています。木造建築をしっかり学べる点が、本学の大きな特徴の一つです。
杉浦
我々はほぼ独学で木造を学んできましたからね。これからここで学べる学生がうらやましいです(笑)
RENOVATION
古川
新築住宅の着工数が激減しているという背景もありますよね。昨年は80万戸ほど新築住宅が建てられましたが、あと10年、20年もすればその数は半分になると言われています。資材費も人件費も上がり、建築費も驚くほど高騰しています。
杉浦
新築は断念してリフォームにせざるを得ないという例を何件も見ています。人件費の高騰により建築業界は一時的に冷え込む可能性がありますが、国民の所得が上がっていく5年後や10年後には、住居の建て替えのニーズが急速に高まると考えられています。
倉島
木造建築は、うまく使えばむしろ鉄筋コンクリート造より長持ちします。かの有名な法隆寺だって木造ですからね。リフォームの需要がますます高まるのは間違いありません。
古川
日本でもヨーロッパのように、改修工事を経て住宅の資産価値が上がるという仕組みに変わっていこうとしています。そうなれば、改修工事の専門家はますます必要とされるわけで、今がまさに分水嶺。この大きな変化の波をこの学校でもしっかり捕らえていきたいですよね。
来馬
若い人たちの考え方も変わってきていますよね。年配の世代には、木の節目を嫌って新建材を選ぶ人も多くいましたが、最近は古材などを好む若者が増えています。たとえ節があろうと経年劣化に耐えられる厚みのある本物の木材には、時間が教えてくれる価値があります。私の実家は150年くらい経った古い家ですが、古い松の木の床材の切断面からとちゃんと松の香りがするんですよ。そういった価値に若者が気付き始めているのは良いことです。
倉島
それなのに、リフォームについてきちんと学べる場がないし、木造建築と同様に改修工事の専門的な技術を持つ技術者も少ないんですよね。
古川
そうなんです。だからこそ、本校では「改修計画論」といったカリキュラムも用意しています。新築だけでなくリフォーム、リノベーションなど、古い建築物を再利用する知識を備えた優れた技術者の養成も本校が目指すところです。