本校の特色として、コースごとの授業とは別に、すべてのコースの学生が一堂に会して同じテーマやモチーフを用いた課題に取り組む、共通授業があります。
共通授業では学生同士の親睦も深まりますが、課題の内容は主に基礎演習です。異なるコースに属する学生同士が、自分とは違う表現に触れることは良い刺激になり、同時に基礎演習を通して焙り出される共通性を見出すことにもつながります。その共通性こそが美術に限らずあらゆる創作活動に求められる、表現の差異を超えた感情に訴える最も重要な力なのです。
共通授業では、全てのコースに共通して必要な美術教育の基本を学ぶことを目標に授業内容を構成しています。美術表現科では、デッサン道具の使い方など道具の扱いから始めます。造形表現科になると、基礎造形力を基盤により高度な授業へと内容が段階的に進んでいきます。表現研究科は、自由に研究制作するため特別な授業はありませんが、自由選択性で基礎を補うための人体デッサンの授業を設けています。
共通授業を通して自分の専攻分野以外の素材、分野にも興味を持つ学生も少なくありません。もとより一つのジャンル内でその問題を解決するにも限界があるでしょう。
かつて西洋絵画が、アフリカンアートや浮世絵に活路を見出した事例はそのことを後世に伝えており、その必要性を嗅ぎ分ける力は基本という物差しにあると考えます。共通授業の重要性はこうした史実からも明らかなのです。
基本は自分を確認する上でも、おりに触れて一生演習していくべきものです。それは技術を安定して支え続け、現在の自分のレベルを知るためにも役立ちます。
ピカソはキュビズムという新しい分野を開拓するとき、タッチという絵具の最も基本的な手法を用いました。あのピカソでさえ革命を起こすのに不安を拭い切れなかったのです。基本を頼り、命綱として誰も通ったことのない暗闇を歩き始めました。絵画史上最も革命的な運動は、最も基本的な技術がもたらしたとも言えるでしょう。真のオリジナルは基本地点に立ち戻り、自ら獣道に分け入ることでしか生まれないのかもしれません。
また内容の画一性を避けるため、学生の傾向にも対応して、年度ごとに部分的な修正を図り今に至ってます。
共通授業は学生の基礎力を培い、視野を広げます。ここでの学びは今後、制作の糧になってゆくことでしょう。
等身大の人体骨格見本と生身のモデルを比較しながら、身体の外側と内側の両面から作画を通じて人体の形の理解を深めていきます。
骨格だけでなく筋肉を中心に内臓や神経にも視点を広げます。
本校の人気授業の一つでもあります。
作品制作の際に色彩をコントロールする知識を養うことを目標としています。
色相・明度・彩度など色に関する知識を深めることは、各々の作品意図を伝えるための表現の幅を広げる手助けとなります。
外観を輪郭的にあるいは表面上の質感のみで捉えるだけでなく、物の構造や量感、内部で動いた力の方向性と表面の質の関係などに着目する授業です。
平面作品の制作だけでは得られない気づきがあります。
全コースの表現研究科の学生を対象に基礎演習を補うことを目的として人体デッサンの機会を設けています。
月1回の定期的な授業で参加は自由選択となり、モデルは女性・男性・ヌード・着衣などバランス良く予定されています。表現研究科の学生のテーマや表現方法は様々ですが、積極的に参加し各々の制作に生かしています。
実技の授業以外に個展などの制作発表に関わる講座や、美術全般に関する知識を学ぶための講座を用意しています。
キャンバス作品の仮額の作り方、紙媒体作品の様々な額装仕様や展示に関わる道具、備品類などの説明と展示体験講座。
制作した作品を発表するにあたって注意すべき著作権や肖像権などについての理解を深める講座。
作品に題名をつける際の考え方を、新旧の芸術作品に付けられた題名を基に分類して考察する講座。
優れた芸術作品を鑑賞し、作品制作への刺激とすることを目的とした講座。事前学習を通して深い鑑賞の方法を学ぶ。